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時代小説が好きで、いろいろ読みましたが、中でも池波正太郎の小説内での語り口調や、人情味、食文化などが気に入っています。
ご存知の方も多いと思いますが、「鬼平犯科帳」は大人気でテレビ番組でも配役を変えてさんざん放送されています。
テレビはテレビで楽しいのですが、やはりじっくりと自分の頭の中で鬼平の世界を作り上げた方がより一層楽しくなること請け合いです。
池波正太郎が鬼平に言わせている語りは、人生の道しるべのような重みがあり、そうか、その通りだと思わず膝を叩くようなものだと思っています。
その一片をご紹介したいと思います。
鬼平の語り
人間というものについて
人間という生きものは、悪いことをしながら善いこともするし、人に嫌われるようなことをしながら、いつもいつも人に好かれたいと思っている
人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。
善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。
悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ
金と申すものはおもしろいものよ。
次から次へ、さまざまな人びとの手にわたりながら、善悪二様のはたらきをする。
全くそうだなぁと納得してしまいませんか。
人間の表裏、自分でもよくわかっていない部分なのではないでしょうか?
こういうことをサラリと語らせているのですから、人間の機微に通じている作家ですね。
人間の不思議さ・複雑さについて
物事には、いちいち理屈をつけるものではない。人間という生きものは理屈とはまったく無縁のものなのに・・・どうも、得てして理詰めに生きたがるのがおかしい
人の心の底には、何が潜んでいるか、しれたものではない
人の心の奥底には、おのれでさえわからぬ魔物が棲んでいるものだ
理屈をつけないと納得しない人っていますね。
人間自体が理屈で生きているわけではないのに、その辺がわかっていないということなのか、わかりたくないのか。
普段は理性が働いているのか、賢人ぶっていても、その内には自分にもしれないなにかが潜んでいる、なんとも恐ろしいことです。
悪人について
人というものは、初めから悪の道を知っているわけではない。
何かの拍子で、小さな悪事を起こしてしまい、それを世間の目に触れさせぬため、また、次の悪事をする。
そして、これを隠そうとして、さらに大きな悪の道へ踏みこんでいくものなのだ
悪人も育っていくもので、生まれ持った悪人はいないというやつですね。
自分のやっていることは正しいのだと屁理屈をつけて悪の道に飲み込まれていく構図、何か、最近の役人の不祥事を見透かしたかのようにも感じます。
勘ばたらきということについて
現代は人情蔑視の時代であるから、人間という生きものは情智ともにそなわってこそ「人」となるべきことを忘れかけている。
情の裏うちなくしては智性おのずから鈍磨することに気づかなくなってきつつある
人が他の動物と違うことが「情智」であると言っているのですね。
智だけが優れていても、そこに情がなければ智は鈍く磨り減っていることに気がつかないでいるということでしょうか?
人生全般について
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どうしても死にたいのなら、1年後にしてごらん。一年も経てば、すべてが変わってくる。人間にとって時のながれほど強い味方はないものだ
新しく生きて、身につきかかった厄を、早く落としてしまうことだ
いのちがけで物事を仕立てのけようなどという男は百人に一人、いや千人に一ほどもいまい。戦国乱世のころとて同じことじゃ
立ち直れそうにない人にかける平蔵の言葉、頑張れではない、具体的な指標を示してくれる。
人の世について
何事も小から大へひろがる。小を見捨てて大が成ろうか
人のうわさというものは半分は嘘だ
約束事というものはよくよくむずかしいものじゃ、人間と人間の誓いゆえ、なおさらにな
剣術もな、上り坂のころは目つきがするどくなって、人にいやがられるものよ。その目の光を殺すのだよ。おのれの眼光を殺せるようにならなくては、とても強い敵には勝てぬし・・・ふ、ふふ。また、おのれにも打ち勝てぬものよ
組織は上意下達と言われますが、押し付けてやらせればいいというような考えでは足元が崩れるということでしょうか。
強さや凄さは、これ見よがしになっては嫌がられる。
能ある鷹は爪を隠すのたとえ、強さや凄さはここぞという時に発揮するものだし、そういう心を持てるようにならなければ、おのれにも勝てないということでしょうか。
まとめ
私の好きな鬼平犯科帳のセリフでしたがいかがだったでしょうか?
小説自体がテンポが良く一気に読みすすめられるので軽快です。
また、小説に頻繁に登場するのは、鬼平のいろいろな場面での食事シーンです。
読んでいると実に美味しそうで作ってみようかという気にさせられます。
気になっているのは、鬼平ファンなら第一に、「五鉄のしゃも鍋」でしょう。
その次は「一本うどん」ですね。こんな食べ物があったのかなと思いますが、実際にあったということです。
次回は、鬼平の食に関しても紹介していきたいと思います。
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