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平成の登山ブームが続いていますが、中高年者の遭難は減っていないようです。
まさか、全くの初心者がいきなり北アルプスあたりに出かけることもないでしょうが、しっかりと段階を踏んで登山に向き合ってきた人なら、いろいろな経験がモノを言うわけです。
しかし、遭難者が減っていない現状を見れば、段階を踏んでいない人たちが一足飛びに高山へと出かけているのかもしれません。
登山をツアーとして旅行会社が企画していたりもするようで、そういう登山に参加しているだけだと観光旅行気分になってしまいがちですね。
登山は、基本的に人間が自然と向き合い、起こる現象を全て受け入れなければ成り立たないので、スポーツとは違うものですが、相当な運動であることは間違いがありません。
若いときからずっと続けていれば、それこそ身に染み込んだ行動ができるというものですが、ある程度年齢がいってから始めたのなら、なかなか経験を積み上げる時間も限られるというものです。
そんな時に実体験を補えるものがあります。
山岳小説や紀行の類です。
山岳小説でもあまり現実とかけ離れているような内容では”面白かった”だけになってしまいます。
いろいろなものがある中で、ちょっと古くなってしまいますが、私がお勧めする小説や紀行、登山初心者の方には参考になればと、ガイドの類も合わせてご紹介させていただきます。
山岳小説
新田次郎
新田次郎は、気象庁中央気象台富士山測候所に勤めて以来、好き嫌いに関わりなく山登りと関わることとなった人です。
一度山頂に入れば30日〜40日は降りられない、このような厳しい環境を経験した氏は、屈折した自意識や自己顕示欲などというものは受けつけず、そのような性格が小説に滲み出ていると言われています。
風雪の北鎌尾根・雷鳴
この小説は短編集で、全13編を収録しています。
風雪の北鎌尾根;
松濤明(登山家1922年 – 1949年)が槍ヶ岳北鎌尾根で遭難した際に遺した登山記録を出版した「風雪のビパーク」を参考にした小説。
始めから終わりまで緊迫した展開が続く。登山家と言われる人でも戻るに戻れなくなる、遭難とはどこかに分岐点があると教えてくれます。
雷鳴;
ハイキングと登山を履き違え、婚約者を連れた高山の鹿島槍への山行で、天候の急変への対応ができず危うく命を落とす一歩手前まで行ってしまう。普段の山行でも肝に銘じるべき判断を教えてくれます。
縦走路
縦走路;
冬の八ヶ岳の縦走で道を間違えたことで想像以上の困難に遭遇する。「冬山の恐ろしさは寒気でも雪でもなく風だ」という、全くもって的確な描写に納得がいきます。
井上靖
明治40(1907)年北海道旭川で生まれる。
昭和25年(43歳)、『闘牛』 によって第22回芥川賞を受賞、その後『あした来る人』 (昭和29年)、 『氷壁』 (昭和31年)などのヒットを飛ばす。
日本の歴史を扱った 『風林火山』 (昭和28年)、西域や中国を舞台にした 『天平の甍』 (昭和32年)、 『敦煌』 (昭和34年) などの作品も生む。
氷壁
昭和三十年に起きたナイロンザイル切断事件をモチーフにした小説。厳冬期の前穂高岳、切れるはずのない最新鋭のナイロンザイルがいとも簡単に切れ、友が滑落死する。
最新鋭というものの危うさ、道具がいかに大事であるか、命を預けるものならなおさら。
この小説の主人公魚津恭太のモデルも伝説の登山家松濤明だと言われています。
紀行
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冠松次郎
冠松次郎(かんむり まつじろう, 1883年2月4日 – 1970年7月28日)は、日本の登山家、沢登りという日本文化を開いた。
黒部峡谷の地域研究で知られる。「黒部の父」とも呼ばれる。
峰と渓
本人が昭和十二年頃の北アルプスの峰や渓について当時の様子を書いておられます。
今では交通が整備されているところも当時は歩いていかなければならず、山の入り口に立つだけでも2日も3日も必要としており、また当時の山の様子も知ることができます。
現代は便利な反面、簡単に山深いところに行けるので、自分の実力を過信してしまうのかもしれませんね。
菊池俊朗
北アルプス この百年
北アルプスに営業小屋ができて2005年で開業100年を迎えた。もう、今年で113年ですね。
登山史には出てこない山行記録ではない視点から北アルプスを見た本です。
山は登山者のためだけにあるのではないし、山に登ることが脚光をあびるはるか前から、山で生業をしていた杣師や猟師などが縦横無尽に闊歩していたのだというちょっと視点を変えたものです。色々と勉強になります。
山行に関連した記事はこちら
ガイド本など
山行をやっている人には余計な情報ですが、一般的なガイド本を紹介します。
マップ類
山と高原地図
山を歩くのに情報が豊富、登山コースや難易度、所要時間、危険箇所の記載などがあり便利。
また、少々の水濡れでも平気。しかし、濡れたままにしておくとくっついてしまい、剥がすときに破れます。濡れたら早めに乾かしましょう。
ex;エアリアマップ劔・立山
地形図
国土地理院発行の2万5千分の1地形図。
谷線を引いたり、磁北偏差を引いたりして自分の使いやすいように工夫する。
濡れないようにする。
ガイド本
アルペンガイド
コースの案内や詳細な解説があり、初めて行く場所では心強い。
山に行く時には必要な箇所だけコピーして持参する。
ex;立山・剣・白馬岳
分県登山ガイド
有名どころの情報は溢れていても、近所の山までは不足している。
このガイドなら、県ごとに有名な山からご近所の山まで結構網羅されている。
ex;富山県の山
その他
今では歩かれなくなったコースや懐かしいコースなどを紹介した本などもあります。
探してみると楽しい発見があるかもしれませんね。
ex;多摩の低山、秩父の低山
エッセイやテクニック本など
朝日連峰の狩人;
朝日連峰の番人に聞き書きした山暮らしの話や遭難の話、大変面白いです。
山でバテないテクニック;
テクニックに走るのもどうかと思いますが、山行に行くたびにバテていてはつまらなくなってしまうので、参考になれば。
山の季節;
山岳写真家の田淵行男さんが安曇野をベースに高山植物や蝶、山などの写真とエッセイを綴った本です。コバイケイソウだけでも珍しい写真が多く、高山蝶の写真など、一見の価値があると思っています。
こちらはいかがですか
まとめ
このような小説や紀行、ガイドの類は、
- 山に行かなくても想像力を働かせて自身を雪山に立たせその厳しさを擬似体験することができます。
- そして、こうなるかもしれないという想定を立てられる元を得て、危険を予知し回避する知恵となることでしょう。
- 事前にその山域の情報を仕入れることは、安全登山の要です。
- それでもやはり、言い古されてはいても、基本は余裕のある計画、隙のない装備、自分の体力に見合ったコースの見極めなんだと思います。
その他にも読み切れないほどの山の本があります。
雨の日など、たまにはこういう本に接するのもいいものですよ。
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