
今日は、以前投稿した『庭づくりを考える』に続く第2弾『南の庭づくり』についての投稿です。7年前、南なのに薄暗く、物置場化しており、雨が降ると池の様に水が溜まっていた庭が少しは変わった様子を「現地調査」から「計画・施工」「考察」まで順にちょこっとお話したいと思います~。
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現地調査

物置場として使われていた南の庭
1)敷地
三角地帯(≒底辺3m×高さ13m)
2)土地レベル
- 庭の中央辺りが窪地状(経年変化かと思われる)→大雨になると雨水が滞留
- 全体的に建物側が低い→建物側に雨水が押し寄せてくる
- 排水・土地勾配がうまく機能していない
- 山から下ってくる水路脇道→流下する雨水が敷地内に流れ込む
3)強い南風(風除けのスギの囲繞)
-
南なのに薄暗い庭の様子
南なのに薄暗い庭の様子
囲繞が混み、建物等に悪影響 - 薄暗い
4)積雪量
- 1~2m程度
- 12月~3月は雪に埋もれる
5)施設(丸太置場)
- 風通しが悪い
- 雨水も滞留しやすい
6)土壌
-
混み合う杉の囲繞
粘土質な土質 - 水はけが悪い
- 植栽するには土壌改良が必要
コンセプトは『自然との共生』
庭は「生活空間」である。
山里の暮らしは自然の影響を多く受ける。雨・風・雪から家を守り、自然に対しての暮らしのスケジュールを考慮し、如何に自然の中で、自然に逆らわず、自然を活かしながら、生活し易く造るかを第一に考える。
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計画・設計
計画ポイント
1)排水処理:排水・土地勾配がうまく機能していないものを再整備する
2)冬の雪除け、凍結を考慮した丈夫で邪魔ならないデザインとする
3)植栽は、その土地に無理なく馴染む樹木や草花をゆっくり育て楽しむ
設計ポイント
1) 犬走り(建物の軒内の俗称、犬が走るほどの細長い通路)
床下への浸水防止・冬場の通路確保として、家の周囲に犬走りを設ける
2)排水処理
- 排水の為、犬走りの手前に排水溝(開渠)を設ける
- レベル・サイズ・コスト・家への出入りなど生活に不便のないものを検討
- U字溝(60mm)を採用
3)植栽
- 囲繞をデザインに取込み、一体感を持たせ、庭づくりに活かす
- 環境に耐性のある樹種を選択、幼樹から植栽する
- 暮らし(作業)の邪魔にならない、スペースを確保する
- 出てきた石を再利用
- 日照・隣家との関係などを考慮
- 土壌改良を検討
4)築山(土を盛って造られた山の景)
- 囲繞のスギは根が充分に張られていないと想定→スギの根は出来るだけ傷つけない(スギの倒木も誘発しかねない)
- 植栽する場所として、築山を構成(土壌改良)
- 景観的には狭い敷地に変化と広さを生む効果あり
5)その他
- 丸太置場の撤去・移設
- スギの囲繞の混みあった箇所を一部間伐・枝打ちによる整理
- 排水がうまく機能する様、敷地内の勾配を整える
- 水路脇道、中央を窪ませる、若しくは水路側へ勾配を整える
植栽詳細設計(樹種選定)
- 雪や風など厳しい自然環境に馴染む自生植物や耐寒性のある樹木(落葉灌木など)
- 耐性を持たせる為に幼樹から植栽
- 花色は白色のものを多く選択(スギの囲繞による薄暗さ解消)
- 「造りこんだ庭」ではなく、「自然風」なものにしたいので、いかにも園芸品種・極端な斑入り種は不採用とする
- 樹高の高い低いや、葉色や青みがかったもの・黄みがかったもの、細葉や丸葉など、組合わせることで表情豊かな寄植えとなるよう、品種を選定
上述から、ヤマボウシ・マンサク・エゴノキ・マユミ・トサミズキ・コデマリ・カシワバアジサイ・ギボウシ・ミヤコワスレ等とする
施工

掘削で出てきた石のほんの一部
1)掘削
勾配を整えるべく掘削を始めましたが、30cm角ほどの石がゴロゴロ出てきて、その多さには本当に驚かされました。実際の施工よりも、掘削作業や出てきた石の運搬に時間を多く費やし、整地されていない地で、一人で人力でやる苦労を思い知る大変な作業でした。
2)犬走り

犬走り施工
コンクリ仕事も掘削同様に大変です。犬走りのデザインは、鼻端にゴロタ石(拳大の石)を当てていくものとしました。家の柱にベンガラが塗られているので、犬走りの仕上げにもほんの少しだけ赤みがかった色粉を混ぜています。犬走りは家の全面に施工しています、南面の施工は最後だったので、石にも慣れ、短時間でうまく並べられ、とても楽しかったです(コンクリ仕事もヘロヘロにはなりますが、嫌いではありません)。
3)築山
4t車1台分客土(排水や土壌改良の目的で新たな土を運び入れる)。庭の間口が狭い為、別の場所に一旦下してもらった土を一輪車で運搬、これ又しっかり土方仕事でした。
4)植栽

白花のミヤコワスレ
囲繞を背景に築山に植栽。西→東に視線が流れ、奥行が感じられるよう配植。
5)石
出てきた石で再利用したのは3石だけです。その他に、もともと此処に残っていた石臼材を飛石(歩行目的に等間隔に据える平天石)に利用しました。飛石の微妙な配置はなかなかお気に入りですが、きっちり決めた”ちり(施工用語、わずかの高さの段差)”はモグラにすぐ破壊されました(笑)。
考察のような感想のような・・

南の庭が変わりました。
1)勾配・排水
勾配・排水に関しては、小さいながらにもU字溝も機能し、以前のような池の状態からは脱しましたが、「満足」とはいかない工事でもありました。
管理

植栽して4年目の様子です。
庭を造ってしまえば除草はかなり楽です。1~2か月に1回、半日ほど手除草ですっきり綺麗になります。

杉の囲繞を背景に植栽。
コンセプトにした『自然との共生』は人と自然もそうですが、既存の植物と追植した植物との関係もかと思っています。そのうちに追植した植物も此処の環境に馴染み、既存の植物とも自然にうまくやってくれる、共存し良い景観が出来て行く~と思いながら作業しています。
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