一般木造の家屋で自然木のままで使っているのはログハウスか屋根を支える小屋梁くらいでしょうか?大概は木材という形で製材されて使われています。
自然木には製材したものでは味わえない魅力があります。
自然木を使った施設と言うと、社寺や仏閣を別にすれば茶室や料亭、貴族の別邸などでしょうか?
自然の造形を愛でる侘び寂びの世界、難しい世界はそっと置いておいて、曲がりくねったものを納めている様子を見ると見事なもので感心させられます。
スポンサーリンク
木 材
製材するのは木割りを行って、一本の木を様々な材料に使えるように有効利用するため。
木割りとは杢と言われる銘木を取って、構造材を取って、下地材を取ってと無駄なく利用する技術ですが、角材が当たり前になって自然木の扱いの出来る人が少なくなってきていると言われています。
角材の長所
- 有限資材を有効利用することができる
- 扱いやすいー作業がしやすい
- 材料を安定して置くことができるーストックするのにも積み重ねが容易
- 同じものを簡単に量産できるー簡単は言い過ぎ
角材の短所
- 製材過程で削ぎ落とした結果木繊維が切れた分強度や耐久性が劣る
- 自然木と同じ強度や耐久性を求めるともっと太い材料が必要になる
- 端材が沢山出るー処分となってもったいない
自然木の長所
- 自然の曲がりなどを生かす木取りをするとデザインとなる
- 木の繊維を切らないので強度が高い
- 製材という手間がない(その代わり自分で皮剥き、乾燥が必要)
自然木の短所
- 自然自由に曲りくねり太さも変化し扱いにくい
- 太さを揃えることが難しいか不可能
- ストックにも積み重ねが容易でなく重が増す
- 加工の際に安定させるのにも工夫がいる
- 樹皮を剥く必要がある
- 自然乾燥に時間がかかる
- 乾燥させる場所がいる
- 乾燥過程で割れや曲がりがひどい場合はオシャカになる
- 乾燥が甘いとホゾが緩む、材種によっては乾燥後でも暴れが生じる
短所の方が多いですねぇ。結論は自然木を扱うのは難しいと言うことなのですね。
なんとか乾燥できてさてやろうかとなったら、自然木の加工の第一歩です。
スポンサーリンク
自然木(丸材)は、とにかく材芯を取ることから始まります
角材も基本的には芯を取りますが、自然木においては必須になります。
自然な風合いをどこに取り入れるのかは感性の問題ですが、実際にそれを取り付けるのは全ては計算ずくです。
- 曲がりくねる自然木をどのような向きで使うのか(見た目が良いかどうか)
- その使い方で相手と絡めるのか(取付ける場所)
- 中間部で取り合う物(壁や他の部材)がある場合、納まるのか
を見極めます。
そして、それで行けそうなら自然木の芯を取っていきます。必要な長さ+αで切った小口に垂直、水平の十字を墨付けてそれぞれを結びます。
- 自然木を使いたい上下の向きに据え付けます。(これが結構難しい)
- 小口の切断面に垂直の線を引きます。(両サイドとも)
- 両サイドの垂直線を結んだ芯墨を打ちます。
- 自然木を90度回転させて先に引いた垂直線に水準器を当て水平に据え付けます。(これも相当難しい)
- 先に引いた垂直線と直角になる線を小口に引きます。
- 両端部に取り合う物がある場合、レベルが同じで良いなら両サイドの水平線を結んだ芯墨を打ちます。
- レベルを変える必要があるのなら補助の材料を垂直線に沿わせて仮止めして反対側とのレベル差をとって墨をつけた後に基準墨から◯寸あがりとか(下りとか)を決めます。
- そして、◯寸上がりや下りで材料に基準墨と平行に墨を打ちます。
これで準備はできたわけです。あとはこの基準墨でホゾやほぞ穴を墨付けて加工します。
身の廻りに自然木で曲線を
太い丸太を使ってなどは専門の方に任せるしかありません。
ここでは、小径木で実際に作った物を紹介します。
身近なところで、直径4〜5cmくらいの枝で作った手すりです。
やり方は同じです。が、材が小さいので安定性が悪く扱いにくいかもしれません。
芯を取って墨をつけて、ホゾ穴やホゾを刻んで組み立てる。上手く行った時はやったねぇという感じです。
そして、完成した手すりは自然の曲線を描いていて大変落ち着きを感じます。(自分だけでしょうか?)自然界には直線や水平は存在しないそうですので、この曲線こそが自然そのものなのですね。
木造建築は木材として自然のものが使われていますが、あくまでも扱いやすく製材した状態が一般的、自然の『形』も合わせて取り入れた物が身近にあると視覚的にも自然を感じることができて癒しを感じ落ち着くのかも知れません。余りにも曲線だらけもいけません、何でも程々が良いかと・・・
自然木が扱えるようになると、伐採木だけでなく剪定した枝まで材料にできますので閃きの幅が広がり、自分の周りに自然木の作品が増えそれに囲まれた癒しの世界が待っています。
山登りで地図上では隣合う山が、道路のアクセスでは県境を越えて迂回しなければならず遠い存在でも、登ってみたらすぐそこにあるって言う、遠いはずが近い不思議な感覚、当たり前だと言えばそれまででも、全く目から鱗そのものの世界です。
自然木の木工も同じような感覚があります。やっている人には当たり前でも目から鱗の木工世界が広がります。
スポンサーリンク