家も長年使っていれば傷んできます。
特にここは山里ですから、床下は湿っていることが多く梅雨の頃にはカビ臭で悩まさせられることも多いです。
湿気がこもってしまっているところがあると部材が腐ってしまいます。
木は乾燥させて使うとは言われているところですが、なかなかそうはなっていないのが現状です。
今回、床組の復旧工事をさせてもらったのでどのように進めたのか、このページをご覧になっている人が自分でリノベーションをする際の参考になればと思い忘れないうちにまとめてみました。
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目次
別にどうでも良いような気がしますが一応定義として
- リノベーションは刷新、修復、機能向上
- リフォームは当初の状態に戻す
と言うことのようです。
リフォームでもリノベーションでも良いのですが、大概依頼があるのは年数を経ていて且つ不具合が生じている状態が一般的です。
物件の状況について
今回の物件もかなりの年数が経っていて床が撓んだかしたらしく先方で解体済みでした。
この辺では昔から床を受ける部材である根太を6尺(1、8m)で掛け渡しており、我家もそうなんですが歩くだけでだわだわしているのが常態化しています。
根太自体も使い回しの部材が多く、材料を大事にしていた経緯が見て取れますが、ちょっと雑な作りですね。
また、材料の寸法自体は十分な大きさを取っておりますが、いかんせん年数が経過して俗に言うクリープ現象なのではないかと思われます。
クリープ現象;建築では長期にわたって荷重がかかり続けたせいで材料の撓みが増大しだわつきを感じるように なるものと言われています。オートマチック車でちょっとづつ進んでしまうこととは違った意味です。
リノベーションの方針
- 大引を追加
- 根太のピッチを細かくする
- 畳を戻す
要望として根太の掛け渡し寸法を6尺から3尺(0、9m)にして床の強度を高めたいとのことでした。
また、床の仕上げは現在の畳を戻すというものでした。
要は床のレベルを元に戻せば良いのですが、すでに物がない状況なので土台や大引への掛かりを刻んで納めているところを確認すると、根太の背もバラバラだったようです。
上端を揃えるわけですから、背が違えば下端を大引のところでひとつひとつ調整しなければなりません。これをやっていくのは大変です。
状況はすぐに飲み込めたので中間に新たな大引を2本入れて製材した同寸法の根太を1尺間に入れることにしました。
こうすると根太の背寸法が小さくなるので強度が低下します。掛け渡し寸法が半分になるので、想定する荷重で根太の許容応力や撓みを計算で確認しておかなくてはなりません。
また、この手の物はまともにやってしまっては納められなくなるので、その辺のことへの配慮も重要です。
まともにやるというのは、建物を作る場合に「規矩準縄(きくじゅんじょう)を正す」というのがありまして、要は直角と水平垂直で作るということが基本にあるわけです。
ただ、古家でこれをやってしまうとあちこち沈下しているため、片がっていたりしている場合が多いです。
なので、水平に下地を作ってしまうと既存の部分との取り合いが合わなくなってしまいます。
全体をやるのなら水平に作り直すことも出来ない相談ではありませんが、一部だけの場合では元へ戻すことの方が重要となる訳です。
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実際の施工について
- 基準を決める。
各所の納まり具合を確認する。
- 材料の搬入を含めた部材寸法を決める。
- 基準を遣り方で出す。
- 束石を設置する。
- 部材へ墨付けして刻む。
- 搬入して組み立てる。
各所の納まり具合を確認しながら基準を決める
それではどこに基準を求めるのか、それを見定めるのが一番の仕事になります。
そんなの簡単だろうっていう声が聞こえてきそうです。
簡単そうで、そうでもないところが難しいのだと思います。
さらに、先方で解体済みというところが既存の納まり具合が確認できないこともネックです。
当然実際に施工する訳ですから、具体的に何をどうするか?それがこの現場でできるのか?出来そうもなかったら次善策は?この辺を考えます。既存の納まりに関しては想定で行います。
第1の基準は
今回は畳の部屋でしたので、当然と言えば当然ですが、第1は床の畳が納まることです。
これは取りも直さず畳下の床板のレベル(ここのレベルは水平ではなく片がったままのです)を元に戻すということです。言うは簡単やるは難しい?
第2の基準は
床板の下は根太ですから壁際での根太の納まっていたレベル(斜めになっていればそれなりのレベル)を確認します。
床は経年であちこちで不等に下がっていて、住人はこれは受認している訳ですから、全体をやるなら兎も角、一部屋だけなので間違っても水平を考えてはいけません。(床の片がりを修正するのは基本的に建物全体のレべルを調整する必要がありますので簡単にはできません。)
第3の基準は
相対する壁際の根太納まりレベル同士を水糸で張って中間の大引(今回は中間の大引は既存のままです)がうまいこと納まっているかを確認して、万が一にも持ち上がっていたり、下がっていたりしていないか(水糸が通っていないと根太が暴れます)を見ます。
ここが通っていないと問題が大きいので手がつけられません。
今回は水糸が通り安堵しました。
材料寸法を決めて発注
水糸が張れれば通りとレベルが見れるので、高さ方向の必要寸法がわかります。
今回は束の寸法が対象です。
水糸から地面までの寸法を抑えて、束石をどの程度地面から上げるか、大引へのほぞ入れ寸法から束の必要寸法を出します。
水平部材はバカ棒などで水糸や既存の大引を基準にして壁際までの寸法を光ります。
これらの作業で必要な長さが出るわけですが、その長さのままで搬入取付ができるのかも考える必要があります。
途中で繋がなければならなければ、例えば大引上で根太を繋ぐ場合長い材料を切らなければならないので、切り無駄と言って無駄になる寸法が発生するものです。
長い材料から片方を切って設置したら、残りの材料で長さが足りないということが多々あります。
このように、図面上の寸法だけでは上手くいかないことがありますので、必ず施工ができる寸法も意識する必要があります。
これらを考慮して材料調書を作り発注することになります。
実施工
ここまで確認できれば次は新設する大引の位置とレベルを遣り方で出して、束石を設置してその遣り方の水糸で束や大引の寸法と位置を読み取って部材へ墨付けをして刻みます。
遣り方;建物を作る際に基準となる通り芯やレベルを水糸で明示するために行う仮の工事のことです。
遣り方の設置し施工寸法を取って刻み取付
今回は施工場所が狭く遣り方をしっかりやってしまうと身動きが取れないので、既存の大引から腕木を出して簡易な遣り方としました。
そうすると水糸のレべルが高くなって束石設置の時に位置確認が雑になってしまいます。
束石の位置がずれると束が半分しか乗らないとか見たくない光景に出会ってしまいます。
そこで束石の設置時にレーザーレベルを使いました。おかげでほぼ真ん中に束が乗っています。
壁際は隣の部屋の仕上げが絡んで、無理に解体すると工事範囲が広がり工事費が嵩むし、納まりがつかなくなる恐れがあるので大概にしてありますから状況に応じて上手く納めるとしか言いようがありません。
ここまで行けばあとはどんどん部材をつけていけば良いだけです。
床下の地面が見えていたところに根太が張られ、板が張られて床が出来上がってくると上手くいったなぁっと喜びを感じることができます。
まとめ
- 仕事は段取り八分と言います。
- 段取りに際して、基準をどこに求めるのかを間違えないようにします。
- リノベーションでもリフォームでも一部をいじる場合には必ず既存に合わせるという視点を忘れないことが大切です。
- 狭い場所に長い材料だったり大きい材料は入りませんから、その辺も考慮して部材寸法を決める必要があります。
- 必要な寸法だけで刻んでみたら施工場所に入らなかったでは話になりませんから。
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